子どもが歯医者を怖がる…無理やり治療した方がいい?

コラム 2026.10.22
執筆
松野歯科医院 スタッフ
監修
院長 松野 彰仁・博士(歯学)/
副院長 松野 麻衣子

この記事を読むことで、次のことが分かります。

  • 子どもが泣いたときに、保護者が焦らず対応するための考え方
  • 「今すぐ治療が必要か」「少し待てるか」を考えるポイント
  • 歯医者への苦手意識を強くしないために、家庭でできる準備
  • 泣いてしまった場合でも、子どもの自信につなげる関わり方
  • 「周りに迷惑をかけるかも」という保護者の不安を軽くするヒント

この記事の要約

子どもが歯医者を怖がる、泣く、診察台に乗れない場合でも、すぐに「無理やり治療する・しない」と決めるわけではありません。虫歯の進行度や痛みの有無によって対応を使い分けることが大切です。                        急性の虫歯で痛みがある場合は、笑気を使いながらお子様の様子を見て、なるべく当日に必要な処置を行います。一方、初期虫歯など緊急性が低い場合は、経過観察をしながら、まず家庭で歯ブラシを嫌がらない状態を目指します。           乳歯を早く失うと歯並びに影響することもあるため、「怖がるから治療しない」と一律に考えず、治療が必要な場合と待てる場合を使い分けることが大切です。

まずは「何が怖いのか」を見つけよう

子どもが歯医者を怖がって泣いたり、診療台に乗るのを嫌がったりすると、「押さえてでも治療した方がいいのでは」と迷う保護者は少なくありません。ですが、まず大切なのは、その子が何を怖いと感じているのかを見ることです。怖がること自体を、失敗と考える必要はありません。

怖さの理由は、音やにおい、口の中を触られる感覚、何をされるか分からない不安などさまざまです。大人には短い処置でも、子どもには大きな出来事に感じられることがあります。「泣く=わがまま」と考えず、怖さそのものを受け止めてあげることが必要です。何を嫌がったのかを、受診後に聞いてみるのも一つの方法です。

無理やり治療することはありますか?

「無理やり治療することはありますか?」という質問には、状況によっては治療を優先することがあります、とお答えします。大切なのは、嫌がっているから必ず治療する、あるいは必ず見送る、と一律に決めないことです。その時のお子様の症状と、治療を急ぐ必要性を見ながら判断します。

例えば、急性の虫歯があり、すでに痛みを訴えている場合は、笑気を使いながらお子様の様子を見て、なるべく当日に処置します。一方で、初期の虫歯など、すぐに削る必要がないと判断できる場合は、無理に治療を進めず、経過を見ながら歯みがきや通院に慣れてもらうこともあります。

症状によって対応を使い分けることが大切です。

その理由の一つは、乳歯にも大切な役割があるからです。乳歯が早い時期になくなると、その後の歯並びに影響することがあります。だからこそ「乳歯だから無理に治療しなくてもよい」と単純には考えません。痛みや進行度、治療の必要性、お子様の様子を総合的に見ながら治療の要否、経過観察かを選んでいきます。将来まで見据えて判断することが大切です。

当院では笑気吸入鎮静法を導入しています。笑気ガスには痛みを感じにくくする作用もあるため、笑気ガスを吸った状態で局所麻酔を行なうことにより、痛みをほとんど感じずに治療を受けることができます。

体への負担も軽く、治療後も数分休めばすぐにお帰りいただけます。

第一段階は家で歯ブラシを嫌がらない状態を目指す

歯医者を怖がるお子様に対して、いきなり治療を目標にする必要はありません。第一段階として目指したいのは、まずご家庭で歯ブラシを嫌がらない状態をつくることです。口の中を触られることに慣れることが、その後の歯科受診にもつながります。毎日の生活の中で取り組める、大切な準備です。

最初から完璧に磨こうとせず、歯ブラシを口元に近づける、前歯に軽く当てる、短い時間だけ磨く、といった小さな段階に分けます。嫌がらずにできたら、「できたね」と認めてあげましょう。毎回長く頑張らせるより、「今日はここまでできた」という経験を積むことが大切です。

保護者が「きれいに磨かなければ」と焦ると、歯みがきの時間そのものが苦痛になりやすくなります。まずは①歯ブラシを見せる、②口に入れる、③短時間磨く、という流れで十分です。できない日があっても、前より少し進めば大丈夫です。歯みがきの時間を嫌な時間にしないことが、その後の通院への安心感にもつながります。家庭で歯ブラシを受け入れられることが、診療室で口を開けるための土台になります。

歯医者を怖がる子への声かけのコツ

子どもが怖がっているときは、保護者の声かけも大切です。安心させようとして「全然痛くないよ」「すぐ終わるよ」と言いたくなりますが、実際に違う感覚があると、「言っていたことと違う」と感じることがあります。

おすすめなのは、「怖いよね」「分からないことは先生に聞こう」「できるところまでやってみよう」と、気持ちを否定しない言葉です。親が焦っていると、その雰囲気が子どもに伝わることもあります。無理に明るくする必要はありませんが、できたことを一つずつ認めながら、落ち着いて見守ることが大切です。

たとえ泣いてしまったとしても、歯医者に来られたこと、診察台に乗れたことだけでも、その子にとっては大きな一歩です。「今日はここまでできたね」と、できたことをしっかり褒めてあげてください。治療まで進めなかったとしても、その日の経験を失敗にしないことが大切です。小さな「できた」を積み重ねることが、次の受診への自信につながっていきます。保護者がその頑張りを認めることも、次の一歩を支える大切な力になります。

子ども専用の時間帯なら、泣いてもお互い様

お子様が歯医者で泣いてしまうと、「周りの人に迷惑をかけないかな」「うちの子だけ泣いていたら恥ずかしい」と、保護者の方まで緊張してしまうことがあります。そこで当院では、子ども専用の時間帯を設けています。周りもお子様連れなので、泣いてしまっても気にする必要はありません。

同じ時間帯に来院されるのは、歯医者が初めてのお子様や、診察台に乗るだけでも緊張するお子様などさまざまです。泣いたり、なかなか口を開けられなかったりすることも珍しくありません。だからこそ「泣いたら迷惑かも」と心配せず、「お互い様」という気持ちで来ていただければ大丈夫です。保護者の方が周囲を気にして焦る必要もありません。

お子様だけでなく、連れてくる保護者の方にもできるだけ気負わず通っていただける環境をつくることが大切だと考えています。「泣いたらどうしよう」と心配しすぎず、まずは気軽に受診してください。

監修者プロフィール

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    院長

    松野 彰仁

    博士(歯学)/日本口腔インプラント学会・日本補綴歯科学会 所属
    大阪歯科大学大学院修了後、大学講師やインプラント専門外来担当医等を経て2013年に松野歯科医院を開業。地域医療や学校医・嘱託医としても幅広く活動中。

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    副院長

    松野 麻衣子

    大阪歯科大学 欠損歯列補綴咬合科 病院医員勤務経験(2007年〜)
    大阪歯科大学卒業後、同大学病院(欠損歯列補綴咬合科)勤務や小児歯科専門クリニックでの研鑽を経て松野歯科医院を開業。小児歯科から補綴(かぶせ物・義歯)まで、幅広い診療経験を持つ。

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